2017年に「働き方改革実行計画」が発表されて以来、長時間労働の解消は多くの企業・自治体にとって重要課題となっています。その改善策にはさまざまな方法がありますが、大分市役所市民税課さまが導入されたのは、オンサイトで事務業務を委託するビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)ソリューションでした。

  • 市民税課では、市民税の税額を決める当初課税業務において、最繁忙期となる4・5月には100時間を超える時間外勤務があったといいます。さらに、臨時の人員確保も大きな負担に。十数年もの間、課題と認識しつつ解決できていなかったこの問題は、トッパンフォームズが他都市でお手伝いするBPO事例を知ったことから急展開。
    プロポーザルを経てトッパンフォームズに委託いただいた結果、時間外勤務は50%削減、申請書類のミスの早期発見、業務効率化など、目標とされていた「適正な課税および働き方改革の推進」をかなえることができました。

今回の対談には、大分市役所市民税課の林さん、芦刈さんとともに、管理監督者として市民税課に常駐したトッパンフォームズの武石が参加。その全員が「事前のマニュアル制作が成功の鍵」と語る理由をはじめ、アウトソーシング導入の経緯から今後のDX推進目標まで、2年を超える歴史を振り返っていただきます。

ゲスト

大分市役所

  • 財務部 市民税課
    参事補

    林 一夫さん

  • 財務部 市民税課
    主査

    芦刈 勝一郎さん

インタビュアー

トッパン・フォームズ株式会社

  • BPO事業統括本部 事業推進本部

    武石 万幸

2年目を迎え、1年目を超える実績を継続

武石

2020年8月に弊社のBPOソリューションを採用いただき、10月に準備室を立ち上げ、翌1月から業務を開始して、早いものでもう1年半以上がたちました。

林さん

時間外勤務の削減について、当初の目標は「3割減くらいかな」と考えていたのですが、1年目から5割減ですからね。

芦刈さん

「そんなにすぐに削減できるの!?」って驚きました(笑)。

林さん

2年目に入ってもさらに削減できていたので、まだ改善できる余地があったことにもビックリしましたね。改めて、トッパンフォームズさんにお願いして良かったと思いました。

武石

ありがとうございます!全国で自治体の課税業務BPOの実績があるとはいえ、みなさんのご協力があってこの成果につながりました。今回は、それぞれの立場でどう動いたのか、その思いなどを振り返るなかで、成功の鍵をひも解いていきたいと思います。

アウトソーシング先進都市への視察で最善策を探る

武石

どの自治体でも当てはまることですが、市民税課では1~3月に各事業所から給与報告書が届き、4・5月で控除額やその他の所得などを合算して市民税を算定、5・6月ごろに確定税額を通知する流れですよね。

芦刈さん

そうですね。1~6月が繁忙期になりまして、特に4・5月は職員の時間外勤務100時間超えが当たり前のようになってしまっていました。

林さん

ちょうどその時期は住民税申告を受け付けるタイミング。職員は庁外各所で受け付け業務を担当していて、事務処理は夕方庁舎に戻ってから行います。私は市民税課にきて10年ほどたちますが、「どうしようもないよね」という共通意識があって、受け入れてしまっていたんですね。

武石

繁忙期中には、臨時職員も採用していたとか。

芦刈さん

実はそこにも問題があったんです。市のホームページやハローワークで募集しても、定員割れをして知人に声をかけて人探しをすることも多く、担当者の負担はかなりのものでした。

武石

長年、そのサイクルが常態化していたなか、いち早く業務のアウトソーシングに成功したN市さまの事例を目にしたことが改善のきっかけになったそうですね。

芦刈さん

当時の所属長が、東京税務レポートに掲載されていたN市の視察記事を読んだそうです。

林さん

今は国を挙げて働き方改革を促進する時代ですし、やはり大分市でも実践すべきですからね。そこからすぐに動き始めました。

芦刈さん

N市、T市、M市といったアウトソーシングの先進都市に電話でヒアリングしたり、視察にお伺いしたり…。

武石

いずれも弊社がお手伝いさせていただいている自治体ですね!

芦刈さん

そうですね(笑)。もちろんほかの事業者に委託されている都市も視察しましたし、BPOだけでなく人材派遣を活用されている都市にも話を聞きました。

武石

今回、人材派遣を採用しなかった理由はなんだったんでしょうか。

芦刈さん

良い人材が確保できることは魅力的でしたが、職員が指示をしたりマニュアルを作ったりと、新たな仕事が増える懸念があったんです。結局、職員の負担軽減にはつながりにくいんじゃないかと判断しました。

武石

なるほど。BPOならマニュアル制作も事業者に委託できますからね。

芦刈さん

そうなんですよ。そういった点も視察でしっかり確認したポイントです。具体的にどんな業務を委託しているのか、大分市ではどう活かせるかなどを意識していましたね。その結果、大分市ではオンサイトBPOが適していると考えました。

トッパンフォームズの実績と熱意を評価

武石

本格導入にあたっては、同じく弊社のオンサイトBPOを採用いただいているT市さまを参考にされたんですよね。

芦刈さん

はい。T市と大分市は税務システムが同じで運用や仕事のやり方がとても似ていましたし、人口規模も近い。時間外勤務の短縮も実現できていると聞いたので、私たちが目指すべき姿だと感じたんですね。

武石

BPO導入に不安な点はなかったんですか?

林さん

各自治体で実績がありますからね。T市のモデルを活用すれば課題解決ができるだろうと、迷いはなかったです。ただ、懸念点がないわけではなかったですが。

芦刈さん

まずは偽装請負防止の観点によって、発注者(大分市)から従事者に直接指示ができないこと。そしてもう1点が、業務に携わらなくなる職員のスキル低下です。

武石

偽装請負に関しては、作業スペースを分けていただいたうえで、大分市さま側では担当職員を限定し、弊社側は私が管理者になって指示命令フローを明確にする方法をとって、懸念は解消できましたね。

芦刈さん

はい。さらにスキル低下については、研修を充実させたり、知識の共有の機会を増やしたりすることで対策できると考えました。

武石

そういった検討もされていたんですね。そして、プロポーザルでトッパンフォームズにもお声がけいただきました。

林さん

先進都市へのヒアリング時に、どの企業が請け負っているのかも教えていただいていましたし、参考にしているT市での実績がありますからね。ぜひ参加してほしかったんです。

武石

弊社が参加するうえでも、事前に他都市での成果を視察いただいていたのは大きかったですね。その後のヒアリングなどでも、「T市モデル」といった共通認識からスムーズに話が進みました。

芦刈さん

そうですよね。

武石

とはいえ、当時はまだ弊社も九州での導入実績がなかったため、私が関西の導入都市に半年ほど出向して現場を学んできました。

林さん

プロポーザル時には登壇してプレゼンもしていただいて(笑)。

武石

けっこう緊張したんですよ(笑)。市民税課のみなさんが熱意を持って取り組んでいることを知っていましたし、責任重大というか。

芦刈さん

事業者の決定は選定委員会が行いましたが、これまでの十分な実績や個人情報保護に対する非常に高い意識、大分市と二人三脚で業務目的の実現に努める熱意などがトッパンフォームズさんにお願いする決め手になったそうですよ。

武石

私自身も大分県出身ですし、思いは相当強かったと思います。

業務見直しで新たな気づきを得たマニュアル制作

武石

弊社の採用を決めていただいたのが8月。10月の実務室の開設まではどのようなご準備があったんですか?

芦刈さん

市民税課内に業務スペースを確保するためにレイアウトを見直したり、パソコンやロッカーなど備品の準備をしたりしていましたね。

林さん

トッパンフォームズさんでもマニュアル制作の下準備をされていたとか。

武石

はい。これから携わるすべての業務内容を洗い出して、弊社BPOを導入していただいている他都市ではどういったやり方をしているかについて調べていました。そして、10月から正式稼働までの3カ月間で、その素地をより大分市さまの業務にマッチするよう調整した感じですね。

芦刈さん

今考えても、この業務マニュアルの作成が本当に重要でしたよね。一つ一つの業務の細部まで確認し、お互いに十分に協議を重ねて作成できたことが、後々の業務改善に大きく役立ちました。

武石

マニュアルは大小あわせて24種類にもなりました。ここでも先進都市での業務担当者になにをどこまで詰めておくべきか相談したり、さまざまなシーンを想定した対応への疑義について、みなさんとも何度もやりとりさせていただきましたね。その時期があったからこそ、調べやすく、使い勝手の良いマニュアルができたのだと思います。

マニュアルの他に繁閑データの算出、チェックリストなどをご用意

林さん

これまで課内で仕事のやり方を伝える際には、ほかの人の作業を見て覚えたり、口頭で確認したりしていたことが多かったんですが、このマニュアル制作で業務の意味を改めて振り返り、細部まで再確認する良いきっかけにもなりました。

芦刈さん

たしかに、ここまでこだわったマニュアル作成は初めての試みだったので、職員側にも大きな意味がありましたね。大分市側はどこまで担当する、事業者側はここまでできる、といった認識のズレを生む懸念も解決できたと思います。

武石

最初の1、2カ月は本当にその繰り返しでしたね。

林さん

だからこそ、1月の実稼働直後からスムーズに進行できたんですよ。

芦刈さん

「こんなにうまくいくのか」って、感動したくらいです。

武石

マニュアル制作に甚大なご協力をいただいたのもありますが、過去の時間外勤務内容のデータなど、あらゆる資料をご提供してくださったことも大きかったと思います。BPOチームの人員調整や、現行プロセスを変えずにどう効率化を図るかといった目標設定などにとても役立ちました。

林さん

たしかに、どうすれば効率化できるのかはお互いの立場から探っていきましたね。

武石

今だから言えますが、稼働して1カ月ほどは初めてのことづくしで、迷いがあったのも事実なんです。ですので、日頃から疑義に対してすぐ回答をくださったり、ミーティングを毎週設定していただいたりした、みなさんのご尽力があってこその結果ですよ。

林さん

そうだったんですね。すぐ近くで拝見させていただいていた印象から「心配しなくてもよかったな」って思っていました(笑)。

武石

そう言っていただけるとうれしいです。弊社内でも、できたことやできなかったこと、一人が抱えている課題の共有化といったミーティングは毎日行っていて、これは稼働から1年半経った今でも続けています。そういったことが実を結んだ結果なのだと思います。

BPO導入が職員だけでなく市民にも便益を生む

林さん

最初にお話したとおり、トッパンフォームズさんのおかげで最繁忙期の時間外勤務は、100時間から50時間、月によっては30時間まで削減できています。さらに、メリットはそれだけではありませんでした。

芦刈さん

有給休暇の取得率も上がりましたよね。働き方改革への貢献度は計り知れません。

林さん

前は仕事が山積みで、やってもやっても終わりがないような状況でしたが、今は残務量が見えるようになりました。「あと1時間あればできるかな」といった予測が立てられるようになって。モチベーションも上がりますよね。

武石

たしかに、前向きに取り組める環境は、効率化に必要な要因の一つですよね。

林さん

繁忙期だけでなく、例月処理もサポートしていただいているので、繁忙期以外は時間外勤務がゼロになったんですよ。

武石

弊社内でも時間外勤務や休日出勤はほぼしていません。スケジュールが厳しい場合は事前に相談して職員さんに助けていただきましたし、逆に手が空いているときにはお手伝いできる範囲を拡大するなど、双方で臨機応変な対応ができたことが決め手だったのではないでしょうか。

芦刈さん

あとは申請書類のチェック機能を強化できたのが大きいですね。最初の目標として掲げた「適正な納税」が実現できました。

林さん

そこは本当に重要でしたね。6月までに市民税額を通知しないといけないので、これまでは申請書類に間違いがないかを精査する業務がどうしても後回しになってしまっていました。繁忙期が過ぎてから確認作業を進めて記載事項に不備が見つかると、追徴課税が必要になるケースもあるので、それだと市民の方にも、職員にも負担になってしまいます。

芦刈さん

合算処理前にトッパンフォームズさん側で書類に間違いがないかチェックをしていただけるので、そういったケースは激減しましたよね。

武石

後の金額が正しい納税額とはいえ、「もう一度支払って」となると確かにいい気はしませんしね…。

林さん

そうなんですよ。だからこそ、今回のBPO導入のメリットは市民にまで波及するものだといえるでしょうね。

芦刈さん

想定していた費用対効果も大幅に上回っていますし、本当にありがたいです。

さらなる業務効率化を目指し、DX推進を掲げる

武石

今回はコロナ禍での導入となりましたが、なにか影響はありましたか?

林さん

実務としてはそこまで大きな影響はありませんでしたが、繁忙期後には保健所の応援業務や給付金業務など、コロナ禍だからこそ発生した急務にも人員を割くことができました。

芦刈さん

アウトソーシングできていなかったら、そんな体制はつくれなかったでしょうね。

林さん

そういえば、昨年秋に庁内の事務改善委員会で今回の成果を発表する機会があったんですよ。

武石

そうなんですか!

林さん

BPO導入の主目的である「適正な課税および働き方改革の推進」がしっかり行えているということで、非常に高い評価をいただきました。

武石

それは私もうれしいです!例えばほかの部署などでも、アウトソーシングは進んでいたりするんでしょうか?

芦刈さん

コールセンターやコロナの給付金関係とか…緊急性の高いものはいくつかありますね。あとは窓口をお任せしている部署もあります。

林さん

事務系の仕事でしっかりと予算も組んで、大きな成果を出しているのは市民税課だけですが、「外注できるものはしていこう」という大きな流れはあると思いますね。

武石

大分市さまではDX推進も掲げていらっしゃいますが、業務効率化に向けて、さらに検討されていることってあるんでしょうか?

芦刈さん

やはりAI-OCR やRPAの導入は選択肢に入ってきますね。読み取れる資料の精査やデータの準備など、人の手がまったくかからないわけではないので、アウトソーシングを検討する必要もあるかと思っています。

林さん

あとはオンライン申告ですね。役所って、来てもらって、書いてもらって、待ってもらって、という場所になっちゃいますよね。しかしコロナ禍もあって、なるべく対面や接触を控えられる手続き方法が求められる。そういった意味でもデジタル化は避けられないですね。

武石

そうなんですね。せっかくすぐ話せる距離で業務に携わらせていただいているので、弊社でも専門知識のある社員に「どうしたら成功するのか」「その近道はどれなのか」といったご提案ができればと思います。デジタル化もトッパンフォームズの得意分野ですので。

林さん

ありがとうございます!

武石

当初課税業務から例月処理まで、年間通じてのオンサイトBPOを導入されたのは、九州ではおそらく大分市さまが初めて。チャレンジ精神あふれる大分市さまだからこそ、次に新しいことに挑戦される際には、ぜひともまた協力させていただきたいと考えています。

芦刈さん

そういえば、ほかの自治体から課税業務のBPOについて問い合わせが何件かきたんですよ。実際に視察に来られたところもありました。

林さん

私たちもT市からフィードバックをいただいた経緯があって、現在高い成果を出せています。もしアウトソーシングやBPOを考えている自治体があるなら、ぜひ問い合わせていただき、視察に来てもらいたいですね。同じ自治体職員として応援したいと思います。

武石

それは心強いですね。弊社もさらにアシストできる範囲を広げられるよう頑張ります。今回はどうもありがとうございました!

  • ※ 所属・役職は執筆当時のものです。
  • ※ 写真撮影時にマスクを外していただきました。

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