インタビュー・会談

【オンライン会談】AI-OCR × RPA同時導入時の思わぬハードル!? 乗り越えるために必要な意識とベンダー選びの秘訣とは

大量の紙帳票から派生する業務の効率化は、多くの企業で実現を図る動きが活発に行われています。その課題解決に有効な手段として注目されているのが、紙媒体をデジタルデータ化する「AI-OCR」と、データの抽出やファイル作成などの業務を代行する「RPA」の連携活用による自動化への取り組みです。

今回、両ソリューションの導入で生産性向上を目指したのが、大阪に本社を構える藤原運輸株式会社さま。陸・海・空の総合物流事業を提供されるうえで、通関業務にかかる帳票は毎月5,000枚以上にもなるそう。数年前にOCRの導入を断念された経緯もあるなか、新たなチャレンジのパートナーにトッパンフォームズ(現 TOPPANエッジ)をお選びいただきました。

AI-OCRとRPAのソリューション選びのポイントをはじめ、「複数の既存システムに影響なく稼働できるのか」「継続的かつ活発に運用するためにはどうすればいいのか」というどの企業にも起こりうる懸念へのアプローチ方法などについて、自動化を推進された鷲北さんと開発担当の新庄さんの両名にお話を伺いました。

新型コロナウイルス感染拡大の情勢を考慮し、オンラインでのインタビューを実施しました。

ゲスト

藤原運輸株式会社

システム室
室長
鷲北 吉成さん

システム室
主任
新庄 静香さん

インタビュアー

トッパン・フォームズ株式会社

【AI-OCR担当】
企画販促統括本部 販売促進本部 リージョン企画販促部 関西販促グループ 
石黒 完

【RPA担当】
企画販促統括本部 販売促進本部 BPM部業務推進グループ 
関根 順一

【営業担当】
関西事業部 第二営業本部 第一部第二グループ 
荒木 拓真

※ 所属・役職、本事例の内容は執筆当時のものです。
※ トッパン・フォームズ株式会社は2023年4月1日付でTOPPANエッジ株式会社に社名変更いたしました。


AI技術搭載の「AI-OCR」が自動化再挑戦への契機に

荒木:本番導入の1年ほど前、「AI-OCRとRPAを導入したい」とお問い合わせいただいたのが最初でしたよね。

鷲北さん:そうですね。RPAソリューションを紹介しているWebサイトで拝見して、ご連絡させていただきました。

荒木:ありがとうございます。御社では数年前にOCR導入を断念されたことがあるとお伺いしましたが、改めて自動化に挑戦するきっかけとは何だったんでしょうか?

藤原運輸株式会社 鷲北さん

鷲北さん:弊社で扱う多様な帳票との相性もあるのかもしれませんが、当時のOCRに対しては「こんなものか」といった印象で。認識精度も期待ほどではなく、読み取り間違いがないかを都度全文チェックする必要もあったので、積極的に導入しようとはなりませんでした。

石黒:確かに、従来のOCRはそうですね。名前のとおりAI技術を組み合わせたAI-OCRはシステム的なフォローが充実しているので、読み込みで不安な箇所があればマーキングしてお知らせする機能があったり、多様なフォーマットの帳票に対応できたりと、とても便利になっています。

鷲北さん:そういった技術の進歩に加えて、同業他社でもAI-OCRやRPA導入事例が増えたことや、各ソリューションの操作性やカスタマイズの自由度が上がり、知識のない人でも扱いやすいという話を聞きました。そこで弊社の役員から「導入を目指して調査してみよう」という意見が出たんです。

荒木:具体的に「この業務を自動化すべき」といった課題はありましたか?

鷲北さん:課題解決というより、生産性向上を目指すイメージですね。例えば、輸出入の通関業務ではお客さまからの依頼はすべて帳票で届きます。その帳票は項目数も多く、人が見て理解し、システムに手入力をする必要があるんですが、その作業時間短縮にいいんじゃないかと。帳票はすべて英語と数字のみの印刷物だったので、自動化に適応しやすいだろうという気持ちもありました。

継続運用に向けて、ベンダーに求める充実サポート

荒木:自動化に向けて、最初に行ったことは何だったんでしょう?

鷲北さん:まずは専任の担当者選びです。AI-OCRやRPAの技術習得には時間がかかるでしょうし、外部研修に参加する必要もあると感じていました。早々に担当者を決めることで、ソリューション選定から携わってもらえますしね。そこで選ばれたのが新庄です。

藤原運輸株式会社 新庄さん

新庄さん:システム室に来る前は自動化予定の通関業務を担当していました。AI-OCRとRPAを導入することになり、システム室に異動しましたが、業務知識はあっても、システムやプログラミングの知識はまったくなかったので、「私で役に立てるのかな?」と思いました。しかし、私自身が初心者だからこそ、誰でも扱いやすいソリューションを選んだり、ロボのつくり方を分かりやすく説明したり、幅広く活用するためのサポートはできるかもしれないと思ったんです。

鷲北さん:技術を扱う人材を育てることは、スムーズに運用するうえでとても重要です。自力でスキルを会得するにも限界がありますし、ベンダーさん選びの際に重視していたのも、人材教育も含めた手厚いサポート体制があるかどうかでした。

荒木:そこが弊社にご依頼いただいたポイントだったんですね。

鷲北さん:ソリューションごとに専任のサポート体制があり、教育システムも充実していると伺ったので、これは安心できるなと。トッパンフォームズさんと一緒であれば、開発に必要な知識を習得して、将来的な活用への不安も解消できると思いました。

荒木:ありがとうございます!

鷲北さん:さらに社内では、実際に業務を担当している人たちは本当に自動化を求めているのかを確認するために、ある倉庫部門をパイロット部門として設定し「自動化したい業務」をヒアリングしました。

新庄さん:実現の可否を問わず率直な意見を出してもらったら、25項目くらいあって(笑)。

鷲北さん:想像以上の数でビックリですよ。中にはAI-OCRやRPAで解決できるものがたくさんあったので、今後自動化を目指す業務の選択肢が増えたことは大きな発見でした。それに、自動化できなかったとしても、現場の困り事を知るのは業務改善の一歩になりますしね。

トッパンフォームズ 荒木

荒木:確かにそうですね。ご共有いただいた「自動化したいことリスト」で御社の目的が明確になっていたので、弊社にとってもソリューション提案の大きな手掛かりになりました。

関根:通常、はじめに「何を自動化したいのか」をお伺いして、どうすれば自動化できるのか、最適なソリューションはどれかといったご提案をさせていただくのですが、想定業務がハッキリしているだけに、すぐに現地調査を行い、どのソリューションが適応できるかを判断できましたね。

現在も未来も、業務自動化が叶う選択を決断

石黒:AI-OCRでは活字読み取りや非定型帳票に強いソリューション「ABBYY FlexiCapture Cloud」をご紹介させていただきました。

鷲北さん:活用したい帳票はすべて英語・数字とはいえ、フォーマットやフォントが異なるというのが少し心配だったんです。その懸念点をクリアできるソリューションをご提案いただいたので、安心してお任せできました。

新庄さん:事前に実際の帳票を使って読み取りテストもしていただいたので、自動化への向き不向き、FAXならどうか、誤読する文字の特徴はどんなものかなどを把握できたのは本当に助かりましたね。

鷲北さん:この検証をしていたからこそ、最も認識精度の高い帳票から着手することができましたし、その後のスムーズな開発につながっていったと思います。

トッパンフォームズ 石黒

石黒:いえいえ、弊社にご相談いただく前に自動化したい業務や想定している帳票をご準備いただいていたから、弊社でも迅速に対応することができたんですよ。

荒木:RPAでは、いくつかのソリューションから「UiPath」をお選びいただきました。その決め手は何だったのでしょうか?

鷲北さん:開発の自由度が高い点がポイントでしたね。その分、操作のハードルも上がると聞いたんですが、できることの制限が少ないほうが社内のさまざまな要望に応えられるだろうと判断しました。

関根:確かに、システム間での直接連携など、人の作業代行に加えてシステム的な対応ができるため、汎用的に活用いただけるソリューションですね。

荒木:操作のハードルが高いことについて、簡単にご説明いただいても良いですか?

トッパンフォームズ 関根

関根:プログラム開発の要素も組み込まれているので、複雑なパターンだと直接プログラムをコーディングして組み立てることもできるんです。拡張性は高いですが、知見がないとなかなか難しいことでもあるので…。実際にロボ開発を担当する新庄さんはどう考えていらっしゃいましたか?

新庄さん:もちろん心配はありました。でもUIが簡略化されている「UiPath StudioX」への切り替えもできる
ので、どうにかなるのかなって。弊社には複数の基幹システムがあって、システム間でも問題なく稼働できるロボットが必要だったので、「UiPath」が一番理想と現実に叶っているとは考えていましたね。

鷲北さん:AI-OCR、RPAともに、現在自動化したい業務に向いていることだけでなく、将来の「ああしたい」「こうしたい」を叶えられる汎用性を求めていたんです。

円滑な運用に欠かせない社内意識の醸成

鷲北さん:本格導入まで何度もトッパンフォームズさんと打ち合わせやご相談をさせていただきましたが、解決すべき問題は社内にもあったんです。

石黒:やはり運用面でしょうか?

鷲北さん:そうですね。弊社は個人で担当している業務が多く、業務の進め方も統一できていない部分がありました。自動化に向けての業務標準化をどうするかという課題があったんですね。

新庄さん:例えば、帳票に手書きでチェックを入れることもあったりとか。書き込み後にスキャンをすると不具合が出てしまうので、必ず事前にスキャンするルールづくりが必要なんです。

関根:小さなことかもしれませんが、とても大切なことですね。

鷲北さん:また、導入にあたって社内で賛否両論がありました。「難しいソリューションを導入しても途中で挫折してしまうのでは?」と心配する意見が多かったですね。

荒木:そういった声はどうやって説得したんですか?

藤原運輸株式会社 鷲北さん

鷲北さん:
説得できたかは分かりませんが、とにかく話をしました。導入後すぐは多岐にわたって活用するのは難しいだろう、習得するまでには数年かかるかもしれないけれども、長い将来を見るべき案件なんだ、という感じですね。弊社の取引企業が自動化の成功事例としてニュースに出たときに社内でも大きな話題になって、それも追い風になりました。

数々の導入実績が裏付ける知見

荒木:今回は、弊社のAI-OCRチームとRPAチームが情報を共有しながら進行しましたが、進め方はいかがでした?

新庄さん:システム間の問題解消のためにAI-OCRをサーバー型からクラウド型に移行した経緯から、AI-OCRの帳票定義とRPA開発が同時に進んだので、処理全体の流れがイメージしづらい部分はありました。

石黒:変更が入って工程が一部重なってしまいましたね。AI-OCRでできること、できないことがあったので、RPA側でいかにカバーできるかについて、関根とも頻繁に打ち合わせしていました。

関根:そうですね。お互いにアドバイスをし合いながら、スケジュールに間に合うように進めていった感じですね。同時導入するソリューションのベンダーに、ともに弊社を選んでいただいたからこそ、足りないところは補い合い、助け合えたのが大きいと思います。

鷲北さん:別々のベンダーさんだったら、責任の押し付け合いをしているかもしれませんね(笑)。

石黒:そうですよね(笑)。

荒木:そんな試行錯誤があって、AI-OCRとRPAを活用しての一括処理が可能になりました。最初に稼働したときの印象はどうでしたか?

藤原運輸株式会社 新庄さん

新庄さん:もう「すごい!」のひと言ですね。これまでは頭の中で考えて判断して、手で入力していたものが、スキャンするだけですべて完了するなんてやっぱり驚きです。このロボはトッパンフォームズさんにつくっていただいたので、その作成手順などもとても丁寧に説明してもらって、勉強させていただきました。

荒木:なるべく簡単に、シンプルに活用するノウハウをお伝えしたと聞いています。

関根:RPAは運用後も変更やチューニングが発生することを踏まえて、プログラミング要素を極力なくした設計をおすすめしています。例えば担当者さまが変わったときなど、前任者がどうやってロボをつくったのかが分からないとメンテナンスに影響が出てしまいますよね。継続した活用のために、保守性はすごく大事なんです。

開発と学びを繰り返して大きな実績につなげる

トッパンフォームズ 荒木

荒木:2020年12月の本格導入から約1年が経ちましたが、その後の運用はいかがでしょう?

鷲北さん:最初につくっていただいた入庫業務の集計処理をするシステムは、10~20枚の帳票を処理してくれるので、担当者の自力で集計処理をする負担が減りました。とはいえ、他にも多種多様な帳票があり、ユーザーにとってもまだ目立った効果としては表れてきていません。

新庄さん:私は、最初につくっていただいた入庫業務の集計処理をするシステムのRPAシナリオから汎用的に使えるパーツをたくさんコピーし作り変えて、新しいロボットをつくりました。倉庫保管料の請求書類をつくるロボです。月に一度ではありますが、担当者はこれまで半日を費やしていた作業だったので「ほかの業務を進められるようになった」と、とても喜んでくれています。

荒木:今後の課題も見えてきたのではないですか?

鷲北さん:自動化導入の話を聞いた社員から「こういうことはできるの?」と相談を受けることも増えましたが、開発できる人材が足りていないことが悩みです。新庄以外にも開発担当者を育てて、ロボ台数を増やしていくことが現在の目標です。

新庄さん:いま開発中のロボもあるのですが、なるべく早く効果検証などを進めて会社に自動化のメリットをアピールできる実績もつくっていかないといけないと考えています。

鷲北さん:現時点では、やはり個人業務が多いだけに、自動化の恩恵を受けるのも個人ベースになりがち。本人はとても満足してくれていますが、周囲から見ると変化が分かりにくいんです。今は一人ひとりの小さな喜びの声を集めている段階といえますね。しかし、属人化した業務の標準化の効果もありますし、今後は、開発したロボの横展開も展望したいと思っています。

荒木:小さな声でも集まることで会社全体に伝わり、人材を増やせるきっかけにもなりそうですね。ひとまずは、新庄さんがロボづくりを続けるということですか。

サポート体制

新庄さん:頑張ります(笑)。ロボをつくる際には、トッパンフォームズさん主催の無料ウェビナーにかなり助けていただいています。役立つ小ワザなどをたくさん教えてもらえますし、「UiPath」は分からないことをメールで問い合わせることもできるので、非常に心強いです。

石黒:今回、AI-OCRとRPAの導入を進めてみて、導入前後で何か印象に違いなどはありましたか?

鷲北さん:ソリューションの快適性などはしっかり理解して進めていますし、活用については今後の運用次第だと考えていますが、想像していたよりもうちのシステム環境にもなじむんだなと思いました。

石黒:例えばどういったことでしょうか?

鷲北さん:複数の基幹システムを運用中だとしても、そのシステムの形態に依存せず、システム間で情報を転用させることができたことはすごく画期的だと感じましたね。既存システムの改造やUI変更など、新しい機能の開発はまったく必要なかったので。

関根:そのあたりはRPAでフォローできることも多いですね。

鷲北さん:日頃から活用している既存のものを変えるとなると、不具合の心配は尽きないですからね。そこに不安がないというのは、自動化に向けて積極的になれた要因のひとつかと思います。あとは地道に知見を積み、今後も継続して運用するために実績を積んでいくだけですよ。

荒木:現場からの「自動化してほしいリスト」はまだまだありますもんね。

新庄さん:私にはまだ対応できないものもあるので、今後も勉強を続けながらできることを探していきたいと考えています。

荒木:ウェビナー以外にも、ご協力できることがあればぜひお声がけください!
本日はありがとうございました。


※ 所属・役職、本事例の内容は執筆当時のものです。
※ トッパン・フォームズ株式会社は2023年4月1日付でTOPPANエッジ株式会社に社名変更いたしました。

2021.11.24

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